委員長挨拶
時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
私たち、東北大学法学部模擬裁判実行委員会は「法学部生としての視点から社会問題を取り上げ、市民の皆様に法と社会の関わりについて考えていただくきっかけを作ること」を目的として、毎年秋に模擬裁判公演を行っております。その公演も、市民の皆様に温かいご支援を賜りまして、今年で73回目を迎えることとなりました。毎年、注目の時事問題や世相を反映したテーマを扱っておりますが、本年度のテーマは「闇バイト」です。
「闇バイト」と聞くと、どのようなイメージが思い浮かべられるでしょうか。これは、SNSやインターネットの掲示板などを用いて、仕事の内容を明らかにせずに高額な報酬の支払いを示唆し、特殊詐欺の実行者を募集するものです。一般的なバイト求人との見分けがつきにくいこともあり、意図せずに闇バイトに手を出してしまうケースもあります。一度加担してしまうと、"やめたい"と思っても、応募時の個人情報をもとに脅迫され、やめることができません。詐欺の主犯は闇バイトの募集で雇った人間と匿名性の高いアプリケーションなどでやり取りし、都合よく利用した後に捨て駒として切り捨てます。そのため、闇バイトに関わった人は逮捕されても、主犯格グループを捕まえることはなかなかできません。
本公演では、闇バイトに手を染めてしまった大学生について扱います。「意図せずに行った犯罪でも、詐欺の主犯と同様に裁かれるべき。」このように考える人も少なくないと思いますが、当事者の立場に立った場合も同じことが言えるのでしょうか。
彼女はなぜ始め、なぜ続け、なぜ止められなかったのか。実行の着手に関する司法の判断とともに、闇バイトの実態と主人公の葛藤についてもご一考いただけますと幸いです。
最後になりますが、顧問の中林先生やOGOBの諸先輩方、東北大学法学部同窓会をはじめ、多くの方からのご支援に心から感謝申し上げ、委員長挨拶とさせていただきます。
東北大学法学部模擬裁判実行委員会
第73代委員長 辻奈々葉